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2011年3月19日

【この1冊】 『金融大崩壊~「アメリカ金融帝国」の終焉』

「終焉」は当分先?興味深い長期視点 

kinyu.png『金融大崩壊~「アメリカ金融帝国」の終焉』
著者・水野和夫
NHK出版・生活人新書、 、。。lkんjh,,,,,kih定価700円+税

 著者の水野氏は三菱UFJ証券のチーフエコノミストだが、前著『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』(日本経済新聞出版社)で超長期の歴史的観点から「アメリカ金融帝国」の成立こそが「グローバリゼーション」の本質であると説き、一躍脚光を浴びた。

 今回はアメリカ発の世界金融危機とその源泉について述べることによって、「アメリカ金融帝国」を支えてきた経常利益の赤字額を上回る資金を世界中から集めて、それを再び世界へ配分していく「マネー集中一括管理システム」が崩壊したことを説き、1990年代後半以降の「アメリカ金融帝国」が終焉した、と説く。

 従って、現在起こっていることは「100年に1回の危機」どころか、世界のセンターだったアメリカという「1極」がなくなろうとしている「資本主義が始まって以来の危機」であり、「無極化時代の到来」なのだという。

 「いきなり荒海に放り出された状態にある」日本はこの事実を受け入れ、国際社会、中でもアジアの国々とどう付き合っていくのか見つめ直すべきだ、というのが結論だ。

 リーマン・ショック直後の2008年央に書かれ、年末に出版された本書は当時の日本人の危機意識にうまくフィットし、ずいぶん読まれたが、現時点から見ると著者の見通しはあまりにも悲観的だ。

 事実、その後のユーロ諸国の財政危機や中東・北アフリカ諸国の動乱、BRICsのインフレ懸念などを経て、結局はアメリカが最優良投資先であるとの認識が広まり、「マネー集中一括管理システム」も「アメリカ金融帝国」も復活する兆しを見せている。水野氏には最近の状況を踏まえた続編を期待したいところである。  (酒)

 

 

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