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2011年3月 5日

【この1冊】 『モーツァルトの食卓』

宮廷料理から安宿惣菜まで

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『モーツァルトの食卓』
著者・関田淳子、朝日選書 定価1300円+税

 モーツァルトには近年、音楽以外のさまざまなアプローチがあるが、「食卓」からという試みはおもしろい。音楽に美酒美食はつきものですからね。
 
 モーツァルトは生涯の3分の1を旅に費やしたが、行く先々で音楽ファンの貴族、聖職者、富裕商人らに招かれ、豪華な食事を提供された。スイカ、ココア、牡蠣(カキ)といった当時の珍品をはじめ、キジ料理やマルツェミーノ(高級ワイン)などの超高級料理を何度も味わったようだ。これらはオペラ「ドンジョバンニ」第2幕の豪華食卓の場に出てくる。
 
 同時に、旅の途中では父親の倹約方針などから、ロクな食事ができず、安い惣菜で我慢したこともたびたびあった。地位と収入を求めて、欧州中を旅した一家ならではのピンキリの食体験も多かったようだ。
  
 もっとも、モーツァルト自身はもっぱら大酒のみで、食事にはそれほど興味はなかったらしい。残された手紙類にも、父親ほど食べ物の話は書いていない。晩年近くに住んだ「モーツァルトハウス・ウィーン」にはハイドンやサリエリら多彩な人物が訪れ、毎晩のようにドンチャンやっていた酔っ払い集団の様相を呈していたという。
 
 評者が訪れた2005年には、まだ「フィガロハウス」と呼ばれ、オペラのさわりを聴いたり、胴体をチョン切られたオペラ「魔笛」の大蛇の漫画などが飾ってあった。食卓に関連する資料はなかったように思う。

 それはともかく、著者は当時の宮廷料理に大変詳しく、圧倒されたが、それもそのはずで、ハプスブルク家の研究者だった。食は文化なり。失礼しました。  (りえ)

 

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